本研究では、3次元胸部CT像における肺腫瘍およびその周辺部の濃度分布から各
種特徴量を求め、良悪性鑑別への応用の可能性について検討する。
最初に、腫瘍内部および周辺部を複数の領域に分割した。
具体的には、腫瘍を楕円体で近似し、腫瘍中心と同一の中心を持ち、
腫瘍の各軸方向の半径を1/3,2/3,1,4/3および5/3倍した5つの楕円体領域に分割
する方法(分割A)と、
腫瘍の各軸方向の半径を1および2倍した2つの楕円体領域 に分割する方法(分割
B)
の2種類を用いた。 なお、腫瘍の中心位置および各軸方向の大きさは、あらかじ
め与えられているも のとする。
まず分割Aの各領域について、濃度の平均値、 濃度勾配が中心を向く割合、 3次
元DCF-N出力の平均値を測定した。 ここでDCF-N(Drectional Contrast Filter
for Nodule)とは、
2次元画像におい て塊状成分を強調し、線状成分は逆に弱める効果を持つフィル
タである。
本研究で用いる3次元DCF-Nは、DCF-Nを3次元に拡張したものである。
次に分割Bの各領域について、濃度差エントロピーを測定した。
濃度差エントロピーは、近隣に位置する2画素間の濃度差から求められ、
濃度分布の複雑度と解釈される。
以上により求めた特徴量を用いて、k-NN法による良悪性の判別分析を行った。
すべての特徴量を用いた場合、良性を良性と判別する率が約50%、悪性を悪性と
判別する率が約70%であった。