プロセッサの追加設計 2(j 命令)と動作実験 2-2

実験の概要

本実験では、プロセッサの追加設計と動作実験を行う。これにより、プロセッサの追加設計の手順とプロセッサの動作の理解を目指す。 本実験では、j 命令が未実装なプロセッサを例とし、追加設計を行い、両命令が正しく実行されるプロセッサを完成させる。また、その動作を実際に動作させて観察する。

追加設計 1

動作実験 2-1 の j 命令が未実装なプロセッサについて、追加設計を行い、両命令を正しく実行するプロセッサを完成させなさい。 また、そのプロセッサと動作実験 2-1 の print_B_while.bin を FPGA 上に実現し、その動作を確認せよ。

本実験を下記の 1, 2, 3, 4 の手順で行いなさい。
1. j 命令のためのジャンプ・セレクト・モジュールの追加設計
2. j 命令のためのメイン制御回路の追加設計
3. 論理合成
4. FPGA を用いた回路実現

なお、本実験で追加設計を行う j 命令のアセンブリ言語は表 1 のとおりである。
表 1: j 命令のアセンブリ言語
区分 命令 意味
ジャンプ j address PC = address * 4

また、本実験で追加設計を行う j 命令の機械語は図 1 のとおりである。
j
000010 address
J 形式 6 ビット 26 ビット
31  26 25   0
図 1: j 命令の機械語

1. j 命令のためのジャンプ・セレクト・モジュールの追加設計

本実験では、動作実験 2-1 で動作を確認した j 命令が未実装なプロセッサについて、追加設計を行う。

本実験では、プロセッサの最上位階層の Verilog HDL 記述 cpu.vを使用する。 cpu.v は、ディレクトリ mips_de2-115 内のサブディレクトリ MIPS 内にある。

ソースファイル cpu.v 中のコメント、追加設計 2 のヒント(1)〜(4)の周辺を、下記の 1, 2, 3, 4 の手順で適切に変更せよ。
  1. 追加設計 2 のヒント(1):jp_sel の入出力用ワイヤの宣言
  2. 追加設計 2 のヒント(2):32-bit, 32-bit 入力, 32-bit 出力のセレクタを実体化
  3. 追加設計 2 のヒント(3):jp_sel の出力 jp_sel_y の pc_next への接続
  4. 追加設計 2 のヒント(4):jp_sel の入力 jp_sel_d0, jp_sel_d1, jp_sel_s の接続

2. j 命令のためのメイン制御回路の追加設計

本実験では、動作実験 2-1 で動作を確認した j 命令が未実装なプロセッサについて、追加設計を行う。

本実験では、動作実験 2-1 で使用したプロセッサのメイン制御回路の Verilog HDL 記述 main_ctrl.v を使用する。 main_ctrl.v は、ディレクトリ mips_de2-115 内のサブディレクトリ MIPS 内にある。

ソースファイル main_ctrl.v 中のコメント、追加設計 2 のヒント(1)〜(3)の周辺を、下記の 1, 2, 3 の手順で適切に変更せよ。
  1. 追加設計 2 のヒント(1):J 形式の命令 j の追加、命令コードの定義
  2. 追加設計 2 のヒント(2):J 形式の命令 j の追加、jp_sel モジュールへの制御信号の記述
  3. 追加設計 2 のヒント(3):J 形式の命令 j の追加、レジスタファイルへの制御信号の記述

3. 論理合成

本実験では、追加設計後のプロセッサならびに命令メモリ、その他周辺回路の論理合成を行う。

論理合成には、追加設計後の main_ctrl.v と cpu.v、動作実験 2-1 で使用したその他プロセッサの Verilog HDL 記述一式、print_B_while.bin から生成した メモリ・イメージファイル rom8x1024_DE2.mif を使用する。

追加設計後の main_ctrl.v と cpu.v を、プロセッサなど一式のディレクトリ mips_de2-115 内の、サブディレクトリ MIPS 内に置く。

更に、 ディレクトリ mips_de2-115 に cd し、pring_B_while.bin の rom8x1024_DE2.mif がそこにあるのを確認して、図 2 のように論理合成を行う。

quartus_sh --flow compile DE2_115_Default
図 2: quartus_sh を使ったプロセッサの論理合成

なお、論理合成には計算機の性能により 5 分から 20 分程度の時間がかかる。 論理合成が完了すると、ディレクトリ mips_de2-115 内に FPGA にダウンロード可能なプロセッサ等の回路一式のストリーム・アウト・ファイル DE2_115_Default.sof が生成される。

4. FPGA を用いた回路実現

本実験では、追加設計後のプロセッサの実際の動作を観察し、動作実験 2-1 で観察した結果との比較を行う。 本実験には、論理合成により生成された プロセッサなど回路一式のストリーム・アウト・ファイル DE2_115_Default.sof を使用する。 DE2_115_Default.sof を quartus_pgm を用いて DE2-115 ボード上の FPGA にダウンロードし、動作させよ。

プロセッサが実行するマシン・コード print_B_while.bin はディスプレイ下部に文字 'B' を 繰り返し表示するプログラムである。 key3 を連打してプロセッサにクロックパルスを送り、プロセッサにPC=0x0000 番地から 25 個程度の命令を実行させ、ディスプレイ下部に文字 'B' が繰り返し表示されるかどうかを確認せよ。 文字 'B' が繰り返し表示されるはずである。

また、 動作実験 2-1 で確認された、動作実験 2-1 の 2 の 1 で予想した結果と異なる動作について、その動作に変化がないかどうかを確認せよ。 動作実験 2-1 の 2 の 1 で予想した結果と同じ動作になったはずである。

参考書


中村一博